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地域をつなぎ、未来を耕す“農事組合法人間連携”|河瀬アグリネット

農家のこだわり

期待の若手農家

2026.04.15

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「食」・「農」・「地域」をキーワードに、
輝く人物や取り組みを紹介する『食農物語』。

第14話は、4つの集落が力を合わせて
地域の農業を守り育てる
合同会社 河瀬アグリネットの
取り組みをご紹介します。

プロフィール

Aim
地域の垣根を越えて未来につなげる農業を育てたい
Region
彦根市河瀬学区
Name
合同会社 河瀬アグリネット
社長 吉田恵一さん(67)
Activities
◆水稲・小麦・大豆
◆集落営農法人間連携
◆農事組合法人「つづらファーム」
農事組合法人「河瀬西部営農組合」
農事組合法人「KGファーム」
農事組合法人「ファーム犬方」

インタビュー

Q 自己紹介をお願いします。
A 「河瀬アグリネット」は、彦根市の河瀬学区にある4つの集落営農法人で構成された合同会社です。

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これまで、それぞれの法人が独自の特色を活かしながら運営してきました。
ただその一方で、各法人で構成員の高齢化が進み、後継者不足が目に見える形として表れてきました。
このままでは事業承継も難しくなるのではないか、という危機に直面したのです。

以前であれば、60歳で定年を迎えた後に農業へ専念するという流れもありましたが、
最近は定年延長や再雇用制度の普及、さらには職業の多様化もあって、そうした流れも変わってきています。
それに加えて、「農業は儲からない」というイメージも社会には根強くあります。
こうした社会構造の変化が、私たちの前に大きな壁として立ちはだかっています。

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それでもやっぱり、後継者は必要です。
農業を基盤として発展してきたこの地域の風土や文化を大切にし、
その価値を次の世代へつないでいきたい――それが私たち共通の願いです。

その願いを形にしようと動き出したのが、法人間の連携でした。
各法人の良さは守りながら課題を共有し、1つの法人では難しいことでも、4つが力を合わせれば実現できるのではないかと、そう考えました。

令和元年11月には、
4つの集落で初めての研修会を開催。
そこからは集落の垣根を越えた連携を見据えて各組織の現状や課題を持ち寄り、
年間10回以上の研修や意見交換を重ねてきました。
そして令和3年12月、「集落営農法人間連携組織」としてスタートラインに立ちました。

その後も議論を重ねながら課題を整理し、着実に前進してきました。
そして令和8年1月、さらなる事業拡大と連携強化を目指して登記し、合同会社として新たな一歩を踏み出しました。


Q 法人間連携や合同会社化で既に現れている成果や変化はありますか?
A 正直に言うと、本当に大変なのはこれからだと思っています。
というのも、まだまだ各法人の課題をより具体的に整理し、調整していく段階にあります。

ただ、確かな手応えも感じています。
例えば、1法人では実現し得なかったドローンを共同で購入したことは大きな前進です。
広い農地の防除を効率的に行えるようになり、労力の軽減を実感しています。
また、4法人のスケールメリットを活かして肥料や農薬などの資材を共同購入し、コストを抑えることもできています。

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それに加えて、これまであまり関わりのなかった隣の法人の構成員と顔を合わせる機会が増えました。
同じ「地域の農業を良くしたい」という思いを持つ仲間として、一緒に取り組む関係ができてきています。
例えば、労力不足で育苗ハウスの継続が難しくなった集落へ出向き、当社の構成員で作業を担うといったケースもあります。
そうした実務を通じて、連帯感も自然と強まっていきます。
特に若い世代にとっては、良い刺激になっていると思いますね。
自分の集落だけに閉じこもるよりも、周辺地域の状況や取り組みを見ながら切磋琢磨する方が、農業としても面白いですから。

また、法人間連携や合同会社化を進めるにあたっては、JAをはじめ関係機関の支援も大きな力になっています。
自分たちだけでは難しいことでも、みんなで知恵を出し合えば乗り越えられる。
まさに協同の力を実感しています。
これからも地域全体で力を合わせ、より良い農村づくりに取り組んでいきたいという前向きな雰囲気を、多くの構成員が共有しています。

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Q 実際に連携を進める中で、どんなことに苦労しましたか?
A 高価な機械は会社でまとめて購入すればいい、
分散している農地は交換して効率化すればいい、
人手不足はお互いに補えばいい
――そうした理想はあります。

でも、現実はそうスムーズには進みません。
というのも、一番難しいのは、法人ごとに異なる規模やルールをどうすり合わせていくかという点です。
構成員の人数も違えば、保有している設備も違います。
大きな農舎や大型機械を持つ法人もあれば、そうでない法人もあります。

機械の貸し借りひとつ取っても単純ではなく、それぞれの規則を照らし合わせながら、
どこまで柔軟に対応するか、どこは守るべきかをその都度話し合う必要があります。

もし連携によって一部の法人だけが便利になり、他に負担が偏るようであれば、
それは良い連携とは言えません。本来の目的から外れてしまいますからね。

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Q 今後、河瀬地域の農業や集落をどのような姿にしていきたいですか?
A 農業が地域の中でしっかりと「働き口」として機能するような姿が目標です。

最近は仕事を求めて地元を離れる人も増えています。
このままでは、若い世代が地域に残らなくなってしまうのではないか、といった危機感もあります。

農業を魅力ある仕事として感じてもらい、それぞれの集落が農業を軸にしっかり機能して、
「ここに住んでよかった」と若い人が思える地域にしたい。
それが私の描いている未来像です。

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そのためにも、まずは地域の農業を身近に感じてもらうことが大切だと思っています。
田んぼが地域にもたらしている価値や、いわゆる「おじいさん」と呼ばれる世代の私たちが、
地域の未来のために汗を流していることを知ってもらえたらうれしいですね。

今回の会社化は、そうした未来に向けて動き出したに過ぎません。
この機会に「河瀬アグリネット」という存在を知ってもらい、少しでも関心を持ってもらえたらうれしいです。

「地域の農業を知ってみたい」と思ってくださる方は大歓迎いたします。
地域のみんなで、これからの未来について一緒に考えていきましょう。

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最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。

季節が巡るたびに、田んぼの景色は少しずつ姿を変えていきます。
変わらないようでいて、確かに動き続けている日々。

その中で、人もまた出会い、つながり、形を変えながら前に進んでいきます。

いま始まったばかりのこの取り組みが、
いつか当たり前の風景として根づいていくその日まで。

この場所で紡がれる物語は、これからも静かに続いていきます。

 

 

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