知る、発信する、つなぐ。多賀の食文化を紡ぐ官民協働プロジェクト|YOBISHI
おいしい食べ方
地域のお店・専門家
2025.06.19

「食」・「農」・「地域」をキーワードに、輝く人物や
取り組みを紹介する『食農物語』。
第4話は、多賀町の「YOBISHIプロジェクト」さんをご紹介します。
プロフィール
Aim
食文化を通じて多賀の魅力を発信したい
Region
多賀町
Name
「YOBISHI(よびし)プロジェクト」
事務局:多賀町立文化財センター
龍見 茂登子(たつみ・もとこ)さん
Activities
◆食文化の調査、記録、発信
◆ワークショップ、イベント
◆郷土料理の記録本『多賀の食べるをつなぐ』発刊
インタビュー
Q自己紹介をお願いします。
A「よびし」とは、親戚やご近所さんを招き(よび)、おもてなしをする湖東地域の方言。
多賀町の食文化継承を目的として平成31年4月に発足し、学生や飲食店経営者など40名弱のメンバーで構成する官民協働の活動を実践しています。
ムラやイエごとに「よびし」の際にふるまわれていた“ハレ”の食、普段の“ケ”の食をはじめとした郷土料理は、継承してきた世代が高齢になり「食べたことはあるけど作り方が分からない」とよく聞きます。
そのような情報をつないでいくために、レシピの記録や背景の聞き取りといった【知る】活動を行い、写真や動画で郷土料理にまつわる情報を集め記録しています。



集まった情報は、ワークショップや展示、紙媒体「よびし通信」、SNS、本の出版を通じて【発信する】活動に取り組んでいます。
そして、それらの郷土料理を継承できる仕組みをつくり、人材を育成していく【つなぐ】活動がこれからの目標です。
これら【知る】【発信する】【つなぐ】といった3つの活動が、私たち「YOBISHIプロジェクト」の骨組みとなっています。
Q具体的な活動の内容を教えてください
Aはい。この日は【知る】活動として、「ぼんがらもち」についてメンバー研修を行いました。
初夏、山野で摘んだ「ぼんがらの葉(サルトリイバラ)」で包んだお菓子を田見舞い、田休み、お盆などに作ったそうです。

多賀町内の主な呼び方は「ぼんがらもち」か「ぼんがら団子」。
他にも「いばらもち」や「がんばら団子」「がんたちもち」など町内だけでも10種類ほど呼び方があります。



生地は、3タイプあることが分かってきました。
①強力粉のグルテンを活かしたスライムのように粘りのある「麩まんじゅうタイプ」
②天ぷらの衣より粘り気のないサラサラに薄力粉で作る「きんつば(田舎まんじゅう)タイプ」
③米粉を挽いて作る「団子タイプ」
餡は、小豆とソラマメの2タイプがあります。
昔、小豆は高級品だったため、普段は田んぼの「ほた(あぜ)」で育てたソラマメで餡を作っていたと聞きます。
今ではソラマメで作る餡の方が珍しく、そのおいしさには驚きます。
今回の研修では、生地3タイプと餡2タイプを掛け合わせた6種類の「ぼんがらもち」を実際に作り、その違いや暮らしとの関わりについて知見を深めました。






Q食文化の継承について語ってもらえますか?
Aはい、喜んで!多賀町は三重県と岐阜県の県境に隣接した町で、関西・東海・北陸の文化が入り混じる所です。
そのため非常に多様な食文化が形成されており、私を含め県外からやってきた人からすると、とても新鮮で面白いんですよね。
一方で地元の人からすると、「そんな当たり前のこと…」と思われることが多いです。

ですが、知ってほしいのです。
町が発行する『多賀町史』上下巻が平成3年に、別巻が平成7年に刊行されました。
歴史や文化、自然環境などをまとめた資料で、地域独自の宝物を後世に伝える役割を果たすものですが、当時編さんされた町史には民俗・食文化などが抜けています。
そんな中、本当に昔からある郷土食のレシピを教えてもらおうにも、知っている方の年齢がどんどん上がっています。
90歳代以上の方に聞かないと分からないことが多くなってきました。
多賀町の歴史を今、聞いておかなければ分からなくなる。
とにかくもうギリギリのところまで来ているんです。

私たちが郷土料理のレシピなどをお伝えしていると、「それ違うで!」と地域の大先輩からご指摘いただくことがあります。
「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
これが、新たなバリエーションを知れる最高のチャンスタイムなんです。
私たちの活動にとって、こんなにうれしいことはありません。
今後、そうして集めた郷土料理を継承できる仕組みを作っていくのが「YOBISHIプロジェクト」の目標です。
例えば、多賀の“おいしいもん”を提案して商品化。
そして作り手、お店、買い手をつなげる仕組みや、多賀の“ええもん”を離れた家族・知人に“おかんのこころでもって”贈る仕組み。
そこから仕事をつくり、定住・移住者を増やす、多賀ファンをつくる仕組み。
帰りたくなる“まち”をつくる仕組み。
プロジェクトを通じて、人材育成ができるのが理想だと考えています。

また課題としては、ここからさらに若い世代へどうつないでいくか、そのために当プロジェクトにどのように関わってもらう機会をつくるのか、といったことが挙げられます。
そこで、多賀町の郷土料理に触れてもらうきっかけとして、誰でも参加できるワークショップを年に7回程度実施しています。
「ぼんがらもち」やチマキ、味噌づくりは定番になっており、毎回盛り上がりをみせているところです。
ただ昔のことを伝えるだけでなく、家に帰って、家庭でもできる簡単な方法もご提案できるよう工夫しています。
インスタグラムで随時告知・募集をしていますので、ぜひフォローしてチェックいただけると幸いです。
ぜひ一緒に多賀町の食文化をつないでいきましょう。
記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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