いつかこの町で、大きな乾杯を。 若者が住み続けたくなる町づくり|鳥居本T63
旬の食材(春夏)
期待の若手農家
2026.03.18
「食」・「農」・「地域」をキーワードに、
輝く人物や取り組みを紹介する『食農物語』。
第13話は、鳥居本T63をご紹介します。
プロフィール
Aim
鳥居本を若者に魅力のある町にしたい
Region
彦根市鳥居本町
Name
鳥居本T63
代表 魚住俊介さん(47)
Activities
◆竹林整備
◆タケノコ
◆町づくり
インタビュー
Q 自己紹介をお願いします。
A 鳥居本T63は、地域に在住する30~50歳代の有志で結成した団体です。
掲げているテーマは、「若者に魅力のある町づくり」。
具体的には、竹林整備や害獣対策といった環境保全、タケノコや竹など地域資源の活用、教育機関や企業との地域連携に取り組んでいます。
町の魅力に触れる人が少しずつ増え、その出会いが新しい循環を生み出していく——。
そんな流れを、この場所で育てていきたいと考えています。
Q 結成当初、WEBマガジンで取材させていただきましたが、その後の活動状況はどうですか?
A 少しずつではありますが、活動の輪が広がってきました。
特に印象的だったのは、地域資源であるタケノコを使った「タケノコご飯の素」の販売です。
昨シーズンは試験的に少量生産からスタートしましたが、地域企業とのコラボイベントで販売したところ、想定を超える反響がありました。
売り場で交わした何気ない会話から、
鳥居本地域がタケノコの名産地だと知る人もいれば、
初めて耳にする人も少なくないことが分かりました。
その一つひとつの声が、私たちのモチベーションにつながっています。
また、炊き込みご飯に向いている米の品種「日本晴」が鳥居本地域の土壌に適しているというデータを踏まえ、
地域の集落営農法人で生産する「日本晴」をタケノコご飯の素とセットで販売する取り組みも行いました。
今後「日本晴」のブランド化も見据え、検証を進めているところです。
このように地域の農産物を組み合わせて発信することで、
町の魅力を伝える新たな広がりが生まれていることにも、確かな手応えを感じています。
そして今シーズンは、タケノコの表年(=収穫量が多いとされる豊作の年)。
今、私たちが直面している課題は、収益性の確保です。
収穫したタケノコは3月下旬~5月上旬にかけて
JAファーマーズマーケット「やさいの里二番館」や、
市場を通じてスーパーに並べる予定です。
さらに「タケノコご飯の素」を武器に、
年間を通じた収益を作ることにも挑戦します。
各種イベントを中心に販売を予定しているので、
見かけたらぜひ、お買い求めください。
この取材を受けている時点ではまだ収穫が始まっていないものの、
正念場となる今シーズン、私たちの中で期待が大きく膨らんでいます。
Q 皆さんが活動する原動力や突き動かしているものは何ですか?
A 原動力は、おいしいお酒です。
もともと私たちは、飲み会の席で意気投合しました。
杯を交わしながら半分愚痴のように地域の課題を挙げる。
でもその一方で、「ここ、ええ町やんな」と魅力を言い合う時間もありました。
そんなやり取りの中で、鳥居本地域には外からも注目してもらえるポテンシャルがあると気付いたのです。
少子高齢化が進む地域だからこそ、「町づくり」は
誰の心にもどこか引っかかるテーマなのかもしれません。
親世代がつないできた思いを受け取りながら、
自分たちの世代なりのやり方で形にしていく。
そして次へ渡す。
そんな流れの中で、自然と団体が生まれました。
例えば、竹林整備は一人で張り切っても、正直しんどいです。
けれど仲間がいれば、汗だくの作業もどこか楽しい時間に変わります。
そして作業を終えた後に仲間と囲む一杯は、最高です。
例えば、イベントで確かな手応えを掴んだとき。
顔を見合わせてうなずき合いながら飲む“勝利の一杯”は、どんな銘柄よりも格別です。
例えば、小学校の食農教育で子どもたちが目を輝かせてくれたとき。
その日の夜は自然と互いを称え合い、盛大に酔いしれます。
例えば、地域がもっと元気になって、新しい飲食店の灯りがともったなら。
今までよりも便利に酒が飲めるでしょう。
例えば、若い世代がこの町を選び、暮らし始めたなら。
今までよりも賑やかな笑い声とともに、
大勢で酒が飲める夜が待っているかもしれません。
結局のところ、自分たちが心から「うまい」と言える酒を、この町で飲み続けたい。
自分たちの暮らしを少しでも面白く、心地よくしていきたい。
その延長線上に地域の元気があり、多くの人の笑顔があるのだと思います。
自分たちの楽しみが、誰かの喜びにつながっていく――
そんな循環が、この活動を支えています。
Q 活動を始めてから、鳥居本の竹林は変わってきましたか?
A はい。歩みはゆっくりですが、確実に整備は進んでいます。
ただ、理想にはまだ遠いのが正直なところです。
竹林は2〜3年手を入れないだけで、一気に荒れてしまいます。
私たちが向き合っている場所も、長く放置されてきたところが少なくありません。
だからこそ、一歩ずつ歩みを進めていく必要があるんです。
整備は、まず入口づくりから始まります。
倒れた竹や樹木を切り分け、通れる道を確保する。
そこから古くなった竹を間引き、
タケノコが伸びやすい環境を整えていきます。
ようやくきれいに整ったと思っても、冬に雪が積もれば再び倒伏し、
景色は振り出しに戻ることもあります。
自然相手の作業に、終わりはありません。
さらに、メンバーはそれぞれ会社勤めや農業をしながら活動しています。
時間には限りがありますし、安全面を考えると基本は複数人での作業が原則です。
一人で竹林に入り、万が一けがをしても気づいてもらえない――
そんな状況は避けなければなりません。
休日に集まり、黙々と手を動かす時間はおよそ3時間が体力の限界。
それでも作業後の達成感と爽快感は格別です。
あの感覚は、仲間がいるからこそ味わえるものだと思っています。
Q 活動をしていてうれしかったことや手応えはありますか?
A 「鳥居本T63」という名前が、少しずつ地域に根づいてきたことは素直にうれしいですね。
昨年は、年間を通して月に一度以上は活動の発信や露出の機会をつくることができました。
地元の小学校、地域企業、近隣大学との連携も進み、関わってくださる方が着実に増えています。
道で小学生に「あ、T63のおじさんや!」と声をかけてもらったときは、思わず顔がゆるみました。
自分たちの活動が、ちゃんと誰かの記憶に残っている。そう感じられた瞬間でした。
竹林整備の話を聞き、「うちの竹林もお願いできないか」と相談をいただくことも増えました。
本当にありがたいことです。
一方で、今の人数では対応に限界があるのも事実です。
整備の範囲を広げたい。タケノコの収穫量を増やし、販路も広げたい。
飲食店の誘致や空き家活用にも取り組みたい。
描いている未来はたくさんあります。
けれど、まだ力が足りない。
その理想と現実の間にある距離が、今の課題です。
Q とにかく伝えたいことはありますか?
A 鳥居本T63では、随時メンバーや協力者を募集しています。
私たちは、「若者に魅力のある町づくり」を掲げ、
鳥居本地域の人口増加につながる活動を続けています。
とはいえ、まだ立ち上がったばかりの小さな団体です。
だからこそ、一緒に汗をかいてくれる方、アイデアを出してくれる方、
少し関わってみようかなと思ってくださる方の存在が力になります。
興味のある方は、ぜひメールでご連絡ください。
本気で、お待ちしています。
メールアドレス
info@tori-t63.com
Webサイト
https://sites.google.com/tori-t63.com/index/
これからも、多くの方の力を借りながら、一歩ずつ前へ歩みを進めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。
静かな竹林に風が抜ける音。
土の中から顔を出す春の気配。
汗をぬぐいながら見上げた夕暮れの空。
その一つひとつの積み重ねが、やがて町の灯りになり、人の笑い声になり、夜空に響く乾杯の音になる。
いつか鳥居本のどこかで、大きな輪になって杯が掲げられるその瞬間。
「あの頃から始まっていたんだ」と思い出してもらえたなら。
今日の物語は、その未来へ向けた、静かなプロローグです。
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