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米から酒へ・酒から米へ――30年の巡りをつなぐ想い|野田 昭宏さん

農家のこだわり

自慢の特産品

2026.06.23

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「食」・「農」・「地域」をキーワードに、
輝く人物や取り組みを紹介する『食農物語』。

第16話は、稲枝酒粕米生産部会で
部会長を務める 野田 昭宏さんを
をご紹介します。

プロフィール

Aim
酒粕栽培を未来へつなぎたい
Region
彦根市新海町
Name
野田 昭宏さん(58)
Activities
◆水稲・小麦・大豆
◆稲枝酒粕米部会部会長
◆兼業農家

インタビュー

Q 自己紹介をお願いします
A およそ9haの面積で、土地利用型農業に取り組んでいます。

現在は会社員勤めをしながらの兼業農家です。
幼少の頃から父の手伝いをしていて、
私にとって農業は身近な存在でした。
父から農業を承継したのは、もう10年以上も前になりますね。

稲枝地域は、皆さんご存知の通り農業が盛んで、
恵まれた環境で農業を承継することができました。

だからこそ、この恵まれた環境を次代に引き継いでいきたい——。
それが、私の農業に対する信念です。

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最近は「食」の大切さが改めて見直されていますが、
農業は太古の時代より、私たち人間が生きていくために必要なものとして営まれてきました。
実際に農業経営をしていると、地域の皆さんに支えられて成り立っている仕事だということを強く実感しますね。

 

Q酒粕栽培にも取り組まれているのですか?
Aはい。稲枝酒粕米部会で今年度の部会長を務めています。

酒粕栽培とは、日本酒の製造工程で生じる酒粕を主体にした有機質の肥料で稲を育てる取り組みです。
収穫した米で再び酒を造り、酒粕を肥料として活用する循環型農業として行っています。

京都の老舗酒造メーカー・月桂冠と「米から酒へ・酒から米へ」をコンセプトに30年前から続けており、
現在も地域で15戸の農家が約15haの面積で取り組んでいます。

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5月末には、稲枝地域のご家庭を中心に参加者を募集し、
酒粕栽培の田んぼで田植え体験を開催しました。

彦根市のキャラクター「ひこにゃん」も駆け付け、おかげさまで大変盛況となりました。
私たちの取り組みを一人でも多くの方に知ってもらい、
関わってもらえるのは本当にうれしいことですし、
とても大切なことだと思っています。

 

Q 酒粕栽培への思いや、これまでの歩みを教えてください
A父が立ち上げに携わっていたこともあり、思い入れは大きいですね。

立ち上げ当初は、なんと生の酒粕をそのまま田んぼへ撒いていたんですよ。
田んぼ一面から漂う強烈なお酒の匂いは、今でも忘れられません(笑)。

その後も肥料として的確な効果が得られるよう改良を重ね、
現在の粒状肥料による栽培方法へたどり着いた経緯があります。

当時の私は父の手伝いという立場でしたが、現在は部会長。
先人たちが築いてきた歴史や伝統を受け継ぐ責任は、大きいですね。

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特に今年は、部会発足30周年の節目です。
記念事業をしっかり成功させられるよう、
JAの担当者と打ち合わせを重ねているところです。

 

Q そもそもどうして日本酒と農業を組み合わせたのですか?
A 農業の独自性を生み出すためですね。

酒粕栽培が始まった背景には、食管法の廃止、
そして新たな食糧法の施行による農政の大転換がありました。
政府によって管理・規制されていた米の流通や販売が緩和され、
農家にも“独自性”が求められるようになったんです。

そこで、酒造メーカーとして独自の商品を作っていかなければいけないと考えた月桂冠と手を組んだわけですね。
これからも月桂冠と農家がともに発展できる関係を築いていけるよう、
時代に即した方法を考える局面を迎えつつあるのかなとも思っています。

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月桂冠の担当者とツーショット


Q 酒粕栽培の課題はありますか?
A もちろん、課題がまったく無いわけではありません。
というのも、コロナ禍以降、
日本酒の需要が減少しているんです。

「食生活の欧風化」「若者の酒離れ・低アルコール志向」「競合する酒類の増加」…。
世間では様々な要因が言われていますが、
以前のことを思うと、私の周りでも日本酒を嗜む人が減ったように思います。

日本酒の需要が減れば、当然原料となる米の必要量が減る。
酒粕米をたくさん作りたくても、作れないんです。

それでも、一定量を継続して栽培し続けることは大切だと思っています。

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Q 消費者に伝えたいことは何ですか?
A 日本酒をたくさん飲んでほしいですね。

日本では地域の祭りや祝い事の際には必ずと言っていいほど、
日本酒が付き物です。

“ハレ”の日に欠かせない日本酒をたくさん飲んで、この不景気を吹っ飛ばそうではありませんか。

私自身、日本酒が大好きですし、
自分が育てた米が商品として形になるのは大きなやりがいにつながっています。

酒粕栽培は環境にやさしい農法ですが、
その分、通常の米づくり以上に手間が掛かります。

特に真夏の肥料散布は本当に大変です。
動力散布機を担いで、炎天下の田んぼを一枚一枚回るんです。

田んぼには日陰なんてありませんからね。

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大規模農家ではスマート農業も進んでいますが、
私のような中小規模の農家では、
まだまだこれからという部分も多いです。
それでも、手間を掛けた分だけ必ず良いものが返ってくると信じて、汗を流しているんです。
彦根市や近隣地域には、まだまだ多数の中小規模農家さんがいます。

お米やお酒など、食べ物の裏側には、そんな作り手の存在があるということ。
それを、ほんの少しだけでも、頭の片隅に置いておいてもらえるとうれしいです。

 

 

記事を最後までご覧いただきありがとうございました。

 

米から酒へ。
酒から、再び土へ。

巡り続ける営みの中には、
受け継ぐ覚悟と、
未来へつなぐ意志があります。

この土地で生まれる一杯が、
誰かの喜びを支え、
また次の季節を動かしていく。

変わりゆく時代の中でも、
人の手が育てる価値は、
きっと変わりません。

 

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